就活ES・面接あるある「困難・挫折経験」
就職活動をしていると、エントリーシート(ES)や面接で、よく聞かれるのが、「挫折経験」や「最も大変だったこと」です。
(1)最も困難・大変だった出来事とそれをどう乗り越えたか
(2)これまでに挫折・失敗した経験を教えてください
似たような2つの設問ですが、その意味合いが少し違います。
(1)の大変だったこと、困難だったことは、掲げた目標に対して途中、失敗あり苦労・苦心をしながらも時に試行錯誤を繰り返しながら達成や解決に向け思考・行動のプロセスを示していくことで回答することができます。
ただ、少々厄介なのが、(2)の「挫折」という質問です。
辞書では、「 仕事や計画などが、中途で失敗しだめになること。また、そのために意欲・気力をなくすこと 」ということです。大変だったことや困難と違う点は、失敗までは共通なのですが、心が完全に折られてしまい、意欲・気力・目標・目的を失い、真の前が真っ暗になってしまう状態のこと。つまり、自分の、事象に対する心の状態を問われているのです。
どんな人にも失敗や苦労があると仮定したとしても、事象に遭遇した際の「心の在り方」を問われるとなると、これにはポジティブ、ネガティブなど個人差が多分にあり、ポジティブな人間は、その困難や失敗を挫折とは考えずに、むしろ成長のチャンスと前向きに捉え、達成や解決のために思考し行動するという人はいます。
企業の考え方として、その困難レベルもさることながら、起きた事象に対してどう考える特徴のある人材なのか(落ち込む、悔しがる、逆に燃えるなど)。また、あまりにもひどく落ち込み、心を完全にふさぎ込んでへし折られてしまうタイプだと、今後もなにか仕事上での困難や失敗があると、完全に心が挫け折れて思考や行動が停止してしまう状態になってしまう可能性がある。それを避けるためにこの質問を投げかけることで、壁や困難な状況に対する乗り越え方の思考・行動パターンやプロセスを確認しているということです。
ですから、ESに記載するの挫折経験と聞かれた時は、自分が生きてきた中で、最も苦しく、その現実から逃げ出したくなる程の困難を感じた出来事を書いてください。それを、人事担当から見て、最近の若者はこんなことで挫折と思うのか、と思われても気にしないでください。人生の挫折は、何度も何度も味わうものではありませんしそもそもこの質問がナンセンスなので。
ただ、面接で回答する際には、素直にESの内容を伝えるという表現も可能ですが、一言、「挫折とまではいかないかもしれませんが、最も困難だった出来事は○○です」というように、冒頭に一言添えても良いでしょう。要するに、その応募者の性格と伝え方の問題です。これには個別に対応方法が異なり、練習が必要ですので我々はじめ第三者を活用してください。
困難から行動レベルやストレス耐性、将来性を見ている
挫折経験そのものもそのレベル(困難の度合い)が見られています。すなわち、どの程度の失敗や苦労を挫折と捉えるのかを推し量ることで、その応募者の行動レベルやストレス耐性を見るというものです。
また、一度挫折や大失敗を経験していると、次には同じ過ちは犯すまいと心に誓い、より高みを成果を出せる人材だという考えを前提に聞いているということもあります。
そして、入社後も新卒として失敗や挫折を経験することもあるでしょうし、仕事を進めていく中で、計画通りに思うように進まないこともあるでしょう。そのような状況においても、うまく目標達成や課題解決に向け業務を推進できる人材かどうか見極めるために聞いているということです。
それから、なにも失敗も挫折も無いと言われてしまうと、人事としては共感できませんし、少々鼻持ちならない奴だなと思う担当も居ますので、ここは大人になって挫折とは本当は思っていなくても、挫折でしたという結論で回答していくことが無難です。
ポイントは以下の5点
(1)目標を持ち行動しているか
(2)困難の度合い
(3)ストレス耐性
(4)どう乗り越えるタイプか(思考・行動)
(5)入社後に再現性があるか
〈挫折事例1〉
剣道部での試合中の靭帯損傷で試合に1年間出られなったことです。それまでは常にレギュラーで自信もあり、全国大会に向け練習にも励んでいましたが、その怪我により、私の選手生命は危機的状況に陥り目標を絶たれ目の前が真っ暗になりました。しかしこのまま落ち込んでいても現状は変わらないと考え、なにもしないよりは、チーム・部活のためになにかできることはないかと気持ちを切り替えました。まず、マネージャーが行う全ての雑用を率先して行いました。また、チームドクターとして、スポーツトレーナーとストレッチの勉強を1日3時間行い、選手のストレッチの手伝いやマッサージなどを行いました。さらに、対戦相手の選手の分析結果をデータでまとめ、試合中には一番声を出して応援するなどして、チームの一員として選手を盛り上げていくことに注力しました。その間もリハビリは継続し、絶対に完治させて全国大会に出るという目標は1日も忘れませんでした。リハビリを終え怪我が完治した後は、それまでのブランクを埋めるために通常練習に加え、朝と夜に1日3時間以上の自主練を加え、練習相手は部活以外に自分の地域の剣道場でも声がけをし猛特訓を重ね、1年後の全国大会に出場することができました。
コメント
表現に改善の余地はあるものの、5つのポイントをおさえていて、苦労も伝わる良文です。特に、怪我をしてから気持ちを切り替えた後の具体的な行動がよく書けている点が、困難にぶつかった際にも現状を前向きに捉え、別の分野で成果を上げようと努力している姿が見られ、仕事においても、失敗や挫折を肯定的に捉え、次の成果に繋げることができそうな人材であることを感じさせます。
〈挫折事例2〉
居酒屋アルバイトでの受注ミスによるお客様からのクレームです。非常に忙しい日で混雑している中、私が受けたオーダーを調理担当に伝えそびれてしまい、お客様に指摘されたことで気づきました。店長にもとても叱られ、とても気持ちが落ち込みました。しかし、落ち込んでいても仕方ないないので、それ以降は、同じ過ちは絶対にしないと決意しました。具体的には、お客様から注文を受ける際には、伝票で受けたオーダーは、他のご注文を受ける前に必ず調理担当に伝えることを徹底しました。その結果、受けた注文の伝え忘れはなくなり、他のアルバイト同様にまで追いつけるようになりました。
コメント
まず、行動レベルとしてあまり高く無いです。アルバイトという題材が悪いわけではありませんが、ミスしてお客に怒られたことが人生最大の挫折というには、少々甘いかなという印象を与えます。 お客様や店長から怒られただけで非常に落ち込む点においてストレス耐性も少し心配な点です。一番改善しなければならないのは、失敗のその後、具体的な思考や行動事実が浅い点です。独自の創意工夫が感じられないので、題材自体を変えるか、その後の行動をもう一度深く推考する必要があります。このままですと、入社後も、困難や失敗があった時に、うまく対処できる人材かどうか不安が残ります。
ちなみに、困難・大変だった事例でよくあるのが大学受験の失敗です。絶対に伝えてはいけない内容ではありませんが、大学受験をして志望大学に行けなったことは比較的多くの応募者が経験しています。そして、学歴には上には上がいることから差別化ができないからです。
もし、伝えるとするならば、例えば
志望大学に入れなかったことです。しかしそこから気持ちを切り替えて、学生生活では徹底的に語学力を磨こうと決意しました。具体的には・・・
というように、その後の思考と行動で、逆境をどう克服しプラスに転じ変えていったのか、ということに重きを置いて伝えると良いです。
以上の事例も踏まえ、挫折や困難な出来事を聞かれた際には、5つのポイントを意識しながら、壁にぶつかった時に、自分はこんな風に考えて、こんな様に立ち回り、乗り越えることができると、読み手にイメージさせる作文の練習をし、それら思考や行動のプロセスを表現することで、入社後、企業でも活躍し利益に貢献できる人材であることを、読み手に想起させてください。
ES(書く)と面接(話す)は別ものです。全くESと同じ内容で伝える必要はありませんし、むしろ、文章と会話では、内容はそれぞれに適した内容に変えた方が良いです。その表現の改善点については、第三者チェックは必須です。我々はじめ、周囲の大人にチェックしてもらいましょう。