お正月が終わると仕事始めの話題になりますが、寝正月から仕事モードへの切り替えにストレスや憂鬱さを感じる人も少なくありません。皆さんの周りではいかがでしょうか。
さて、就職活動では、
人事から「あなたの就活の軸は何ですか?」と聞かれることがあります。
質問の意図は、
自己分析と業界・企業研究が的外れではない確かなもので一貫性があり、仕事に対する価値観が企業の価値観とマッチしているかを確認するためです。
面接では、その志望者が、本当に熱意を持って応募してきているのかを確かめます。その際、深い業界・企業研究に根ざした志望動機であるか、ということはもちろん、その場しのぎでぼんやりと抽象的な自己PRをしていないか、就職活動の軸を聞くことで確認します。
そこで、企業は就活の軸を聞くことで、本人の本気度にスクリーニングをかけ、企業が目指す方向性や価値観とズレが生じていないか確認する ということです。
以前のブログ、自己分析の落とし穴と正しいやり方にも記載したように、自己分析することは、自分に問いかける内向的行動ではなく、働くを知る、社会を知ることで、自分自身の就業観や業務の理解を深める外発的行動であることをお伝えしました。
もちろん、過去の行動事実を振り返り、どのような思考や価値観を根拠に行動の動機につながっていたのかを確認することは大切です。
ただ、それだけに終始してしまうと、自分の興味・関心などの「好き嫌い」だけで業界・企業研究をしてしまいがちになるのと、説得力の伴った深い志望動機を組み立てることが厳しくなります。そこで、就職活動の軸という考え方が出てきます。
就活の軸はすべての根幹
就活の軸を考えるときに、自己分析や業界・企業研究、志望動機を考える作業と切り離して考えてしまいがちですが、間違いです。なぜならば、就活の軸は、あなたが企業を選ぶ際に大切にしている判断基準の根幹であるのであれば、それは、まさにその企業を選んだ理由である志望動機に直結している考えの基礎だからです。
それどころか、判断や価値基準を明確に示すことが就活の軸の語る理由であるということは、その発言に一貫性があり確かなものであることを、過去の行動事実で証明する自己PRの作業工程と同じなのです。
自己PR、自己分析、業界・企業研究、志望動機。これらすべてが互いに作用し合い、関連しながら深まっていく。そして、それらの根幹を形成するのが就職活動の軸なのです。
では、実際どのように就職活動の軸は形成していけばよいでしょうか。
ポイント1 就活の軸は「仕事」ベースで考える
NG例
・海外で勤務したいのでグローバル展開している企業
・評価制度や海外留学制度などがきちんと整備されている
・給料が高く福利厚生が充実していてワークライフバランスが取れる
これらは、企業の資源や環境を利用して、自分が享受できるメリットを並べただけの内容ですので、就活の軸とは言えません。そして、本音と建前の論議で言うと、どちらかというと本音過ぎます。
本音・本心は心に留めておき、面接で語れる内容に変える必要があります。就活の軸は、自分の希望や願望など、やりたいことを並べるものではなく、自分の頑張り次第では、その企業で実現可能なものかという仕事目線で考えてください。
ポイント2 その仕事は受けるものではなく与えるものか
・多くの利害関係者の中で間に立ち、人間関係を調整し、着実に業務遂行できる能力
・膨大な情報を計画的かつ正確・迅速に整理し知識を蓄積していく強み
・周囲を見渡しながら優先順位をつけて物事を判断し目標を達成していく力
そのような能力を活かせる仕事というイメージです。
企業は、自社へ継続的に利益をもたらしてくれる人材を獲得するために採用活動を行っています。したがって、ポイント1のように、企業側からなにか「与えて」自分がそれを「享受する」というような消費者目線の応募者には魅力を感じません。
自分が、継続的に利益をもたらすことのできる人材であることを証明するために、長所や強みなどの自分の能力を活かせるということをESや面接では伝えます。ですから、就活の軸も同様、自分の能力を活かせるかどうか、という視点で組み立てることが求められます。
就活の軸の根拠「なぜ」まで考える
・なぜ、他業種のあらゆる全ての企業が顧客となる仕事を望むのか
・なぜ、多くの人間とチームで関わり成果を出していく仕事を望むのか
・なぜ、インフラを通じて新興国を支援したいと思うのか
・なぜ、ファイナンスを通じた中小企業支援に携わりたいのか
過去の自分の経験を論拠に、その価値観が形成された理由を伝えることで、真偽性を明確にし、信憑性を持たせることができます。これは、自己PRで自分の強みを考える時も、志望動機を考える時にも、すべてに共通することです。
「なぜならば」という根拠を明確にした論理展開は、ESでも面接でも非常に重要です。書く(文章)、話す(伝える)際の習慣として徹底して身につけてください。
就活の軸の根幹は、「営業」である
社会貢献や自己成長という抽象的なワードではなく、より深みと説得力のある就活の軸にするためには、仕事(業務)に着目し、自ら企業に利益を与えるものであり、その軸の根拠まで明確にしておく必要をお伝えしました。
自分が行動することにより、どのように企業に、顧客に、社会に利益をもたらすことができるのか。営業方法、つまり、ビジネスとして企業がお金を稼ぐ仕組みを理解し、その稼ぎ役としてどのような働き方・仕事の進め方を望むのか。
それを突き詰めていけば、ビジネスの根幹であり、企業存続のための柱である、利益を生み出す職種「営業」を考えないわけにはいきません。
その業界・その企業の営業手法や形、モノやサービスを通じて利益を生み出す構図を理解して初めて業務理解を深めることができます。
就活の軸は、働き方の軸。すなわち、自分の営業という経済活動によって利益をもたらす手法・方法を考えることにほかなりません。その仕事が好きかどうか、という短絡的な考えではなく、自分の得意を活かせるかどうか。向いているかどうかという視点で仮説を立て、それらを社会人やOBOGをつかまえてぶつける。
この作業の繰り返しによって、営業の仕事の業務理解が深まり、就活の軸も深まり確固たるものに昇華していく、ということです。
万全に仕上げた就活の軸と、その後
やっと完成した就活の軸。それをもとに企業面接を受け見事内定。
と、ここまでは順調ですが、入社後、思い通りの配属や仕事に就けなった、あるいは、多忙な業務をただただ必死にこなしていくうちに、なんだか業務が単調でつまらなくなってしまった。
そのようなことは残念ながら往々にしてあります。早く帰りたい。もう寝たい、週末までまだこんなあるのか。皆さんの先輩社会人も愚痴をこぼすようなこと、あるのではなのでしょうか。
そう、就活の軸は、就職活動時にはとても重要なものだと教られ、頑張って組み立てて、面接時にそれを繰り出し、見事内定して希望の企業に入社しても、1年、2年と経過すると、だいたい皆、忘れます。
・当時の思いって何だったっけ。
・あの頃の自分は、どんな抱負で入社したんだっけ。
疲れ切った表情からは、就活当時の光輝かしい未来を描く自分には想像もできません。
けれど、それでいいのです。
以前のブログ、『好きなこと』を仕事にしてはいけない理由でもお伝えしたように、キャリアはゴールイメージから描きづらいものですし、どこへ流れ着くのか、その舵取りは、特に20代では見えませんし、分かりません。
それでも、目の前の職務に一生懸命取り組んでいると、新たな光明が指し、道が拓けてくるもの。
今、就活の方には、就活の軸はとても大切だと申しますが、いつか忘れます。
それでも、諦めずに必死に頑張っていれば、道は必ず拓けますので、ネガティブに考えずに、将来の自分への投資だと思って、今は一生懸命就活の軸を作ってください。