毎年、ITや通信関連に興味を持つ学生と面談すると、NTT データとNTTコミュニケーション(以下NTTコム)両者の線引きが曖昧でよくわからないという声を聞くので簡単に解説します。
「データはSIer、コムはNW」
NTTデータ公式によると、NTTコムとの関連性について以下のように説明しています。
『日本国内においてあらゆる通信サービスを提供しているNTTグループの中核会社として、NTTデータは情報システムとコンピュータネットワークを主として扱い、NTTコミュニケーションズは国内の県間通信サービスなどを提供するとともに、国際通信事業にも進出しています。 2社はグループ会社として、協力関係を保っています。』
参考
http://www.nttdata.com/jp/ja/faq/index.html#q07
簡単に表現すれば、
『NTTデータ』はデータ通信事業を行うシステムインテグレーター(SIer エスアイヤー)であり、長年官公庁や金融系の大規模システム開発を手がけてきました。情報システムの企画・設計開発から保守までトータルサポートを行い価値を提供します。
『NTTコミュニケーションズ』は、長距離・国際通信事業を行う通信回線事業者(通信キャリア)でありISP(インターネットサービスプロバイダー)事業者でもあります。全世界に広がるネットワークインフラ(NW)を持ち、ICT(情報通信/伝達)技術を活用したソリューションを提案します。
「ものづくり(開発)がしたいか、通信サービス(便利)を広めたいか」
〈NTTデータ〉
NTTデータはSIerですから、システム屋さんです。基本的にはSEとして配属され、顧客の情報に関する課題や現状をヒヤリングした上で企画・要件定義を行い、システムを設計・構築して顧客の課題や要望に情報システム提供という形で答えていくスタイルが自分の適性に合っていれば向いていると思います。
ただ、大型案件が比較的多いのと、昔ながらの古くからお付き合いのある公共部門、金融機関がメイン顧客となるため、ドラスティックや改革案や常にアイデアや変化に富んだ環境ではなく、ニーズに対して真面目に着実にやりきる力が要求されます。
語弊を恐れず言えば、官公庁や金融や各産業など国内に超安定で盤石かつ幅広い顧客を有しながら、仕事としては言われたことを納期までにきちんとやる職人気質な真面目な専門家集団
というところでしょうか。
〈NTTコム〉
情報通信(伝達)技術の活用とは非常に多岐にわたり想像しにくいです。例えば、全世界に広がるネットワークインフラとデータセンター設備を活用した法人向けのクラウドサービスの提供。
例えばインターネット接続サービスのOCN光や、ひかり電話などの個人向けアプリケーションの提供。
通信インフラを持つ安定収益の強みがある一方で、変化スピードの早い通信業界では、既存のネットワークインフラが陳腐化するのも早いです。
ですから、世の中の変化に敏感に察知し、変化・改革を恐れずに果敢に挑戦していくマインドの方の適性が高いと思います。
「今後のカギは”海外” ”クラウド” ”シナジー”」
〈海外〉
NTTコムは、海外に広いネットワークインフラを持つという点だけ切り取ると、さぞ海外売上比率が高いと思いきや、NTTコム(27%)よりもNTTデータ(30%)の方が高いです。
両社長とも、2020年に向けてNTTコムは40%へ、NTTデータは50%に引き上げる目標をビジョンとして打ち出しています。
ただ、NTTコムには1年間の海外トレイニー制度があるため、若手のうちから海外で教育研修を受けることができます。
いずれにせよ、NTTデータ、NTTコム両者とも今後の海外展開には力を入れているということ。
しかし、現場の足元レベルではまだまだ国内が軸足で稼いでいるため、
「新卒時から海外で活躍したい!」という強い意欲で入社すると、期待はずれになりますので注意してください。
〈クラウドビジネス〉
NTTコムは、ネットワークインフラだけに頼らない、データセンター設備の拠点展開においてM&Aの拡大、クラウドやセキュリティー関連事業の強化が急がれるでしょう。※国内クラウド分野では、Amazonが提供するAWS(Amazon web service)に首位の座を奪われています。
NTTデータも同様に、クラウド事業には注力しています。具体的には、2000年代後半からは国内鈍化を見据え、欧米を中心に積極的にM&Aを行ってきました。近年では、米デルのクラウド等ITサービス部門の買収など海外M&Aに積極的です。
今後、ビッグデータをAI、(人口知能)を活用し効果的に分析し、最適解を追求する過程においては、クラウドがその一連の処理を高速かつ安全に支える環境を提供する必要があります。
また、IoT(モノのインターネット)、つまりあらゆるモノがネットに連動されその商品が普及しスタンダードになれば、このIoTを実現するために、インターネットにつながる多数の「モノ」から情報を収集したり、収集したデータを解析の技術を用いて適切に加工し活用したりする際に、クラウドは重要な技術の一つとなります。
だからこそ、NTTコムは、その、クラウドを管理するデータセンター設備とセキュリティ強化を急いでいるのです。
じゃあ、グループなのだから一緒に協力すれば良いではないか、というのが最後のテーマです。
〈グループ間シナジーの発揮〉
これまでの分割された歴史的経緯から、両者の協業は昔から進んでいたわけではなく、むしろ互いが認め合い互いを尊重し、独自の道を進んできました。
それでも、2010年以降からはNTTグループとして少しずつ連携を進めます。
どちらかと言えば、国内では連携が少ないものの、海外では活発に手を取り合い、共同で受注に成功した事例も増えてきた。
NTTグループは、グループの連携による受注=クロスセル戦略を前面に世界で戦おうとしています。
http://action.ntt/worldwide/0001.html
両者のクラウドに関する協業のプレスリリース
http://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2016/20161108.html
この流れを止めず、
*海外グループ会社とのシナジーの発揮
*NTTグループ間でのシナジーの発揮
により、グローバル市場でいかに認知度やプレゼンスをあげていくかが今後の成長戦略のカギになるでしょう。
事業領域や成長戦略が重なる部分があるため、その切り分けを完全に行うことは難しいですが、自分の適性と照らし合わせ、少しでも両者の違いやグループとしての方向性を掴んでもらえれば幸いです。