広告代理店の仕事とは?実際の現場は?
とみてきましたが、今回はシリーズ最終回です。
(その他マスコミ志望者、クリエイティブの仕事、下請けの制作会社やプロダクション、ダイレクトマーケティング領域については記事を改めます)
前回までに、広告代理店の総合職でもっとも配属される確率の高い営業という職種では、
「要領がよくて、愛嬌のある体育会気質の人材」
が、求められることを書きました。
もちろん、実際には様々なタイプの社員が働いていますが、好まれるのはこのような人材です。業界のイメージ=クリエイティブの人と企画を話し合い、お互いアイデアを出しながら仕事をしていく華やかさというよりも、非常に泥臭い仕事が待っているのです。
広告代理店で求められる能力とは?
では、全くクリエイティビティが要らないかというと、そうでもありません。情報があふれる時代に、生活者に見てもらい興味を持ってもらえるような広告やコミュニケーションは、どこか目新しさや情報の面白さが必要になってきます。
自分が企画やアイデアを主に出す職種に配属されなかったとしても、
・企画やアイデアが妥当かどうか
・他社(特に広告主の競合)で同様のコミュニケーションを実施していないかどうか
といった部分には、目を光らせる必要があります。
企画を出す側は自分で考えたと思っていても、どこかで見たものを無意識的に覚えていて悪気なくアイデアを出してくる場合もあります。既視感のあるアイデアや企画は、効果を生みにくい場合もあるのです。
4)情報感度の高さ
そこで求められる能力は一言でいうと、「情報感度が高いこと」ということになるでしょう。世の中のニュースや流行といったものを、広く情報収集していること。
そして、例えば、ポケモンGOやVRといった流行りものは、自分なりに体験するなどして知っておく(深く知っている必要はありません)といった、情報を広く収集し、実体験してみる気質は、広告代理店には必要です。
求められずとも、自然と情報収集するような知的好奇心は必要なのです。
大事なので何度か繰り返していますが、広告主(クライアント)は何にお金を払うかというと、自分たちでは生み出せない企画やアイデア、それを実現することなのです。
好奇心があり、まずは試してみるようなタイプでないと、「何が広告やキャンペーンとして面白いのか、有効なのか」といった部分で、良いのか悪いのか評価もできません。
当たり前ですが、クライアントとの打ち合わせ時間では、「ググる」ということはできません。情報産業なのに、何も知らないと、クライアントの宣伝やマーケティング担当との会話の中で信用も失ってしまい仕事もいただけないのです。あらかじめ情報をインプットしておくことは重要ですが、これは人によってかなり差があるのです。
こういった能力は、面接選考ではなかなか見極めにくい部分ですが、応募者からの立場からいえば、自分の身近なこと以外に関心が薄い人は、広告業界は目指さない方がいいと思います。
ただし、いくら情報感度が高いといっても、1000人に1人の変人である必要はありません。広告とは、生活者に「広く告げ」働きかけることで、消費行動をうながす(つまり消費者となってもらう)コミュニケーションです。広く告げる対象者(ターゲット)は、必ずしも変人ではありません。
特定の領域に詳しい人、とにかくそれを大事にして生きてきたという人は、雑誌編集者のようなもっと自分を活かせる仕事がきっとありますので、覚えておいてください。(自他ともに認める変人で、アイデアが豊富だから広告業界に入るんだとは安直に思わない方がいいでしょう)
今後の広告業界
最後に、今後の広告業界ですが、大変な倍率を潜り抜けて広告代理店に入社しても、明るい未来が広がっているわけではありません。
まず、新聞、雑誌、ラジオ、テレビという4媒体(シンザツラテと呼ばれていました)は、勢いを失ってきています。
・新聞をとっている学生はどれだけいるでしょうか?
・雑誌を定期的に購読している人はどれだけいますか?
・ラジオを聞いていますか?
・TVはみていますか?録画してCMスキップして視聴していませんか?
その勢いがなくなってきているのが実感できると思います。
今のところ、TV局は他の媒体と比べ、相対的によいポジションがとれていますが、これらの旧来型の媒体(メディア)は、効果測定が非常に難しい部分があります。
一方、インターネット広告などの伸びている領域は、どれだけ見られたか、どれだけ契約につながったかがリアルタイムで測定できます。費用対効果にシビアな広告主は旧来型のメディアからこれらのインターネット関連の広告費に、広告予算を振り替えています。
これが、インターネット広告費が伸びている理由で、日本の広告業界全体が大きく伸びているわけではないのです。
参考:2015年 日本の広告費/媒体別
http://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2015/media.html
そして、日本は人口が減少しています。これは、新聞や雑誌の販売部数が減り、ラジオやTVの視聴者が減っていくこととイコールです。媒体によって一部の勝ち組、負け組は分かれるものの、全体としては、日本国内の広告予算は減っていく不可避なのです。
これが広告業界、特に日本主戦場とする広告代理店に明るい未来が待っているわけではないといえる根拠です。
経済活動と広告は密接な関係がありますので、広告やコミュニケーションの形は今後も変化し必ず残っていきます。
悲観的な見方もありましたが、変化のうねりの中では、一定の確率で新しいビジネスチャンスも存在しますし、自分次第では、ダイナミックな仕事や新たなノウハウを身に付けられる可能性もあることをお伝えしておきます。
以上、シリーズでみてきましたが、業界を単なるイメージでとらえず、具体的に理解するように努めましょう。広告業界を憧れやイメージで志望して、就活に多くの時間を費やしてしまうと結果としてもったいない(他の業界や会社を受けるチャンスを失ってしまう)ことになります。
今まで紹介した仕事内容をふまえ、大きく市場が伸びていくわけではないことを覚悟した上で、志望するようにしてください。