転職の壁「年齢制限の限界説」について
皆さんは、話題を読んだドラマ、『逃げるは恥だが役に立つ』を観てましたか?星野源さん演じる、IT企業に勤めるシステムエンジニアの設定が確か35歳でしたね。経験もスキルも資格も持った彼のようなハイスペック人材は、世間一般的には転職するには遅いとされている35歳でも、その経験や技術力が欲しい企業からは引く手あまたでしょう。
さて、この30歳、35歳などの転職限界説は、どこから来たのでしょうか。
おそらく、これまで年齢制限の記載が許されていた時代に、「応募資格:35歳まで」という記載が多く、そのイメージが未だに浸透していることが起因していると思います。 厚生労働省の雇用対策法が平成19年に改正され、年齢制限の禁止が義務化されてもうすぐ10年が経過しますが、未だにそのイメージの名残りが無意識に残っているのではなでしょうか。
そして、もう1つの壁、30歳というのは、大卒程度を想定している公務員の応募時の年齢制限が30歳前後に定められています。それが基準となり、民間企業から公務員への転職者は毎年、景況に関係なく一定数いる中で、「30歳までに転職しないと公務員になれない」という感覚が、民間企業から民間企業への転職の場面でも残っているのかなと考えます。
ただ、実際には、35歳まで応募可能OKな自治体や、年齢制限無しのの自治体もあります。
昨今の転職年齢
さて、昨今、転職時の年齢は男女ともに過去最高を更新し、平均32.3歳となっています。
職種別では、慢性的な人材不足業界の建築土木系が最も高く36.8歳、次いで機電系の技術者33.9歳、IT系技術者32.6歳。
なんだ技術職じゃないか、と思いきや、 企画・管理33.8歳、 販売職は30歳、事務職も29.7歳と前回より1.2歳プラスです。
調査を開始した10年前の2007年では、30歳以上の転職成功者は39.7%だったのが、最新の調査では、55.4%にまでその割合が増えています。
参考
DODA(デューダ)
専門分野を確立できれば35歳以降でも転職可能
20代が成長期であれば、30代は成熟期。業種・職種にもよりますが、一般的にはそのように浸透しています。
ですから、転職年齢限界説にもこれに倣って、30歳、35歳を1つの目安にしているのだと考えます。ただ、30歳を過ぎてしまったら、専門性を身につけ、高度複雑化する企業の課題を解決できる人材にはなれないのかというとそうではないと考えます。
そもそも、労働人口が減少し、働き手が高齢化していることに加え、企業の顧客である消費者も高齢化している現実があります。家や車、投資信託を売る相手がミドル、シニア層になれば、20代の若手よりも、30代、40代のベテランの方が、顧客が安心するケースもあるからです。
数字上でも、先のDODAの調査によれば、転職を成功させた人の、じつに29.7%が35歳以上で、30歳~34歳までのミドルゾーンの25.7%を上回っていますので、20代でなければ転職は不可能と思う必要はありません。まして、昨今では、企業の抱える課題、取り巻く環境の中で、いかに競争力の高く、差別化された製品やサービスを迅速に顧客に提供できるか、という知識や経験、ノウハウを持った人材は、何歳だろうとも企業は欲しいはずです。
そのためは、当たり前のことですが、
・自分の専門領域や得意分野を確固たるものにする
・目指す業界や職種で不足しているスキルは磨いておく
ということが大切になるかと思います。
何でもこなせるけれど、浅く広いプレーヤーよりも、私にはこれができます、といった、1つに特化した高度専門的な経験や知識を持っていた方が競争に勝てる と思います。
ひと昔前までは、35歳を過ぎたら人材育成などのマネジメント経験者でコミュニケーション能力があればOKという印象はありましたが、今はご存じのように管理職だけを求めているわけではありません。
スマート家電のようなIoT化や電気自動車の普及といった、新たなパラダイムの転換期において必要とされるのは、年齢を制限を気にすることではなく、その分野に精通したスペシャリスト的なプレーヤーを目指すことではないでしょうか。 ・情報セキュリティ分野に関しては何でも知っている ・スマートデバイスの組み込み技術に精通していて経験も豊富 ・不動産の投資効率を考え提案する専門家でありながら、建築士や、ホームインスペクター(住宅診断士)資格も持っている。
そのような、今の自分の強みや専門性はなにかを把握し、目指す分野・方向性を定め、その得意領域に磨きをかけていく。 また、今後挑戦したい分野に不足している自分の能力を、資格で補うなど、次のステージに向け虎視眈々と準備をしておくことが大切だと考えます。
まとめ
・30歳までには、ある分野では即戦力となる人材を目指し、専門知識や経験を蓄積する
・35歳にまでは、少数のマネジメント経験・実績を携え、自分にはこれがあるという専門技術・能力を磨く
・35歳以降には、部門横断的なプロジェクトのリーダーや責任者経験・実績を携え、専門技術・能力をさらに蓄積していく
30歳を過ぎたからもうダメだとさじを投げてしまうのはとてももったいないので、ひとまず、35歳までは、私にはこんな経験や能力・知識があるという分野を磨き、極める。そして、そのスキルが、次の職場で即戦力として再現可能であることをPRできるように我々含め、第三者チェックで万全にしてください。