2015年以降、経団連が、企業の採用活動時期を後ろ倒ししたことで、インターンシップが盛んになりました。
2017年に実施の新卒採用では、面接解禁は6月スタートとなります。
企業の本音
このインターンシップですが、企業側の本音は「優秀な学生と早く会いたい」ということに尽きます。
早期に学生と接触したい企業は、積極的にインターンシップを取り入れてきました。現在、新卒学生にとっても、就活の登竜門としてインターンシップが一般的になってきており、今年も1月にインターンシップのエントリーが締め切られる企業も多く存在します。
今回は、このインターンシップについてご紹介しましょう。
インターシップの種類
インターンシップの種類ですが、「期間」「内容」に大きく分かれます。
<期間>
・短期型(1日~1週間程度のプログラム、)
・中、長期型(2週間以上のプログラム、企業によっては数か月のところも)
<内容>
・セミナー形式(企業説明会に近い形で、社内にある様々な仕事を見聞きするスタイル)
・ワークショップ形式(特定のお題を渡されて、チームで意見をまとめて発表するスタイル)
・実業体験形式(特定の現場に仮配属されて、実際の仕事をサポートするスタイル)
まず、期間ですが、特に短期ですと、実際に社風といったものまではわからないのがほとんどです。応募者側からすると、「少しでも企業の本音を知ることができる」「部活や授業に影響することなく気軽に参加できる」などのメリットがあるようにみえます。
建て前ではなく本音を知る!
しかし、本当にそうでしょうか。実際の「企業のリアル」「現場のリアル」を観察することはできるのでしょうか。
実際に企業で学生を担当するのは、人事から選ばれた部署、社員であることを忘れてはなりません。これらの社員は、選抜された「キラキラ社員」です。人物的にも魅力で世話好き、そして、学生ウケしそうな魅力的な業務についている場合がほとんどです。間違っても離職者が大量に出ているようなハードな部署、パワハラっ気の多い上司がいるブラックな匂いのする職場には配属しません。
なぜ、このような部署、社員をインターンシップで学生にあてがうのか。
それは企業の本音をみればわかります。
企業は、インターンシップを通じて仕事体験を提供するという建前がありつつ、早期に優秀な学生と接触しつつ・・・
①本選考に進む学生をスクリーニング(選抜)したい
②面接ではわからない能力を見極めたい
③優秀な学生とつながりを持ち、いざ内定が出た段階でリテンション(引き留めること)につなげたい
という本音があります。
それぞれ説明します。
まず①ですが、エントリーシートや履歴書上は素晴らしくても、いざ会ってみると採用したくない学生はいます。企業にもよりますが、「コミュニケーションをとるのが著しく苦手」「チームワークがとれない」「自分の意見を押し通し柔軟さや素直さに欠ける」等です。
これらは、面接選考でもチェックできる部分ですが、丸一日一緒に行動をとれば、こうしたネガティブチェックは確実にできる部分でしょう。
次に、②ですが、面接選考では会話主体の選考となるため、時として「面接のスター」といえるような、会話力が高い人材に丸を付けてしまいがちです。特に素人の面接官は、会話力=仕事力と評価してしまいがちです。
ただし、会話があまりうまくなくても、じっくり仕事に取組み着実に成果を上げるタイプもいます。これは瞬発力勝負になりがちな短時間の面接では見極めるのが非常に難しい部分です。
そこで、例えば、仮のテーマを設定してワークショップを経験させて、出来不出来を観察するのです。地頭の良さ等をチェックするにはこうしたワークショップは効果的でもあります。
そして、③ですが、企業の採用活動は、応募者を選考すると同時に、応募者から選んでもらうという側面があります。一般的に内定を出すまでは企業側が有利ですが、内定を出した後は、内定者側が有利です。複数の企業の内定を持っている学生にとっては、いかに内定前にその企業との接点を持ったか、良い印象を抱いたか、が決定的に重要です。
企業は内定者にやさしく接するものなので、リテンションにおいては、内定前にいかに応募者に対して好印象を残しておくかが決定的に大事です。そこで、実際には起こりえない夢をみさせるような企画を考え提案させるような仕事ごっこをさせて、「楽しかった」「入社したら毎日こんなにワクワクできる」「先輩社員は有能そうで自分もこうなりたい」と思わせるのです。
面接選考よりも相対的に一緒に過ごす時間が長いインターンシップでは、優秀な学生に対して、社内の様々な人間を紹介し社員接点を増やすことで、内定後の引き留めに効果があるのはわかると思います。
これはインターンシップの非常によろしくない闇の部分といっていいでしょう。
以上、ざっと企業の本音ややり口をみてきましたが、このような内容で、インターンシップが組まれていることを考えると、その印象だけで企業の全体的な印象を決めてしまうのは、「安易」だということがわかるでしょう。
企業は何故スッピン(実務)を見せてくれないのか?
では、なぜ具体的な実務をなかなか見せてくれないのでしょうか。これも仕事の実態を考えると、見えてきます。
・そもそも外に出せないような機密事項を扱うため、学生のような部外者に参加させることが困難である。(守秘義務を無視されてSNSで開示されたら莫大な損失を被るような仕事もあります)
・「現場のリアル」をみせてしまうと、そのハードさ、地味さに学生が失望してしまう。(またはその可能性が高い)
理由は、圧倒的に後者です。「現場のリアル」をみせてしまうと、一言でいえば引いてしまう。
例えば、営業活動でよい成績を出していない部下を上司が叱責しているとか、若手社員は地味な作業中心ばかりで全然輝いていないなど、こういう状況をそのまま見せてしまうと、本採用での応募者は減ってしまいます。よほど企業ブランドに自信がない限り、なかなか「現場のリアル」は見せられないでしょう。
今後もこの傾向は、大きくは変わらないと、おさえておきましょう。
つまり、インターンシップに参加しても「現場のリアル、企業のリアル」は、なかなかわからないのです。
では、インターンシップは、参加する価値のなく全く意味がないものなのでしょうか。実は、応募者側の立場で考えると、メリットもあります。選考を有利に進めるためには必要とも言えます。
次回は、応募者の立場からインターンシップについて、まとめてみたいと思います。
お楽しみに。
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